五臓の「心」のおはなし
なんだか寝つきが悪い、ちょっとしたことで動悸がする、顔色がさえない。そんな不調と深く関わっているのが、五臓の「心(しん)」です。心は胸の中、左右の肺の間にあります。五臓六腑をまとめる王様のような存在で、「君主(くんしゅ)の官(かん)」と呼ばれてきました。心のおもな働きは2つあります。
1つめは「血脈(けつみゃく)を主る」こと。心の力で、血液を血管の中に流し、全身をめぐらせます。体のすみずみに栄養を届けるポンプのような働きです。2つめは「神(しん)を蔵す」こと。ここでいう「神」は、意識や考える力、感情などの心の働きです。さらに、体全体の生命活動そのものも指します。心がしっかりしていると、頭がすっきりして、気持ちが安定し、夜もよく眠れます。
この2つの働きは、深くつながっています。血が足りなくなったり、めぐりが悪くなったりすると、もの忘れや不眠、夢が多いといった心の不調が出やすくなります。反対に、緊張や不安が続くと、動悸や胸苦しさにつながることもあります。
心の調子は顔と舌にあらわれます。中医学では「心は其の華(か)、面(めん)に在り」、そして「舌は心の苗(びょう)」と言います。心が元気なら、顔色は赤みがあってつややか。舌は淡いピンク色でうるおい、味もよくわかり、言葉もなめらかに出ます。反対に、心の血が不足すると顔色が白っぽくツヤがなくなります。
それから、汗も心と関係が深いもののひとつです。汗のもとになる水分と血液は、同じ食べ物の栄養から生まれます。そのため「汗は心の液」と言われます。感情では、心は「喜(き)」と結びついており、喜びは気や血のめぐりをよくしてくれます。ただし、過度な喜び・はしゃぎすぎは気持ちが散って集中しにくくなることもあります。
季節では心は「夏」と結びついています。心は「熱を悪(にく)む」臓器です。そのため、夏の暑さで心に熱がこもると、イライラして眠れない、口内炎ができる、といった不調が出やすくなるんです。
心は、体と心のどちらにも関わる大切な臓器。ほどよく笑って、ぐっすり眠って、心をいたわってあげてくださいね。
成城漢方たまり・谷澤瑛美