五臓の「肝」のおはなし
ささいなことでイライラする、気づくとため息ばかり、目が疲れやすい、足がつりやすい。そんな不調と深く関わっているのが、中医学でいう「肝(かん)」です。
肝はお腹の右上、肋骨の内側にあります。のびのびと上へ伸びようとする性質があり、勢いのある臓器なので「将軍(しょうぐん)の官」と呼ばれてきました。
肝のおもな働きは2つあります。
1つめは「疏泄(そせつ)」。体内の気の巡りをのびやかに整える働きです。気がスムーズに流れると気持ちもおだやかになります。消化を助けたり月経リズムを整えたりするのも、この働きです。肝は「条達(じょうたつ)を喜び、抑鬱(よくうつ)を悪む」臓器。のびのびするのが好きで、押さえつけられるのが苦手なのです。
2つめは「蔵血(ぞうけつ)」。血をたくわえ、必要なところへ送り出します。体を動かすときは血を全身へ送り、休むときは血を肝にもどします。月経のリズムや、妊娠・出産を支えているのも肝の力。女性にとって肝はとくに大切な臓器です。
肝の調子は筋や爪,目にあらわれます。中医学では「肝は筋を主り、其の華は爪に在り」、そして「肝は目に開竅(かいきょう)する」と言います。肝の血が足りていれば体はしなやかに動き、爪はかたくつややか、目もよく見えます。反対に血が不足すると、手足のしびれやこむら返り、目の乾き、爪がもろくなる、といったサインが出てきます。涙も肝と関係が深く、目のうるおいを保っています。
感情では「怒」と結びついています。肝が元気なら腹が立ってもほどほどでおさまります。ただ、激しく怒ると肝の気が頭にのぼり、頭痛や顔のほてりが起こることもあるんです。怒りをため込むと気がつまって、わき腹や胸が張って苦しくなることもあります。
肝は「春」と結びついています。草木が芽吹いて伸びていく春は、肝の働きが高まる季節です。
何かと忙しい暮らしでも、肝の「のびのびしたい」気持ちに寄りそって、ゆったり過ごすのがおすすめです。怒りをため込まず、肝をいたわってあげてくださいね。
成城漢方たまり・谷澤瑛美